3Dスキャナーをリバースエンジニアリングに活用!事例も紹介
近年3Dプリンター技術が発展する中、リバースエンジニアリングの活用が注目を集めています。リバースエンジニアリングは、図面が不要で試作品のデータ化や製品の解析に役立つ技術です。
また3Dスキャナーを用いることで、リバースエンジニアリングに活用できます。本記事では、リバースエンジニアリングの事例と、適した3Dスキャナーの特徴について解説します。
リバースエンジニアリングとは?
リバースエンジニアリングとは、モデルに対して形状データを測定し、3D CADデータを作成することです。試作品のデータ化や製品の形状解析など、様々な用途で使用されます。
製造業において、通常は設計図面を用意してから製品を作成します。しかしリバースエンジニアリングは、既に存在する製品からデータを取得するため、通常とは逆(リバース)の手順です。
具体的には3Dスキャナーで活用でき、下記の流れでリバースエンジニアリングが用いられます。
- 3Dスキャナーで形状データを取得
- 形状データを座標原点に合わせる
- メッシュデータから面を作成
- 3D CADデータを作成
それぞれの手順について、詳しく解説します。
3Dスキャナーで形状データを取得
はじめにモデルとする製品を用意し、3Dスキャナーで測定します。
このとき取得できるのが、点が集まって構成される「点群データ」。点群データは一つひとつの情報が集まっていますが、3D CADデータとして使用するためには「メッシュデータ」への変換が必要です。
メッシュデータは点群データを統合し、面や辺でつなぎ合わせたデータのことです。
メッシュデータの形状を滑らかにしたい場合は、3DCADソフトを用いて辺の数を増やしたり、スムージング処理をしたりすると良いでしょう。
形状データを座標原点に合わせる
メッシュデータを作成すると、形状データとして使用できます。ただし、位置情報が含まれていないため、座標からのずれや角度の調整が必要です。
そこで、基準軸と基準平面を設定して位置情報を反映します。基準軸はX軸、Y軸、Z軸の3つ、基準平面はXY平面、YZ平面、ZX平面の3つです。
軸と平面を決定した後、形状データを回転・傾斜させて角度を調整します。
メッシュデータから面を作成
位置や角度を揃えたメッシュデータから、面を作成します。各面に対してサイズ設定や分割を行い、面の構成を決めておきましょう。
3D CADデータを作成
面の構成が決まったら、3D CADデータを作成します。作成方法は、主に「自動面貼りタイプ」「手動面貼りタイプ」「ソリッドモデリングタイプ」の3種類です。
自動面貼りタイプは、モデル形状の曲率に合わせて面を構成する方法。自動で面を構成できるため、手軽に使用できることがメリットです。
短時間で3D CADデータを作成したい場合に適していますが、面が角ばる傾向にあるため、手動で修正・調整が必要になります。
手動面貼りタイプは、手動で面を構成する方法です。自分の好みでデータを編集できるため、細かい調整により精度の高い3D CADデータを作成できます。
ただし、データ作成に時間がかかってしまうため、サイズが大きい3D CADデータ作成には適していません。
また面構成に関するノウハウが必要なため、事前にスキル習得が必要です。
ソリッドモデリングタイプは、3Dスキャナーで測定したデータを基にモデリングする方法です。
測定が不十分な箇所も手動で編集することで、欠陥がない3D CADデータを作成できます。ソリッドモデルは頂点と線、面で構成されるため、曲面が多い形状には適していません。
3Dスキャナーで読み取ったデータを3D CADデータに変換する際、精度やデータ化のスピードに優れる変換ソフトがおすすめです。
SCANTECHでは素早く3D CADデータに変換できる「Geomagic Design X」を提供しています。下記のCADソフトに対応し、直接データ出力が可能なためデータの取り扱いにも優れています。
- SOLIDWORKS
- Siemens NX
- Autodesk Inventor
- PTC Creo
リバースエンジニアリングの事例
リバースエンジニアリングが実際に使用される例を紹介します。主な事例は、以下の4つです。
- クレイモデルや試作品のデータ化
- 製品の解析
- 美術品のデータ保存
- 製品や金型の設計
クレイモデルや試作品のデータ化
リバースエンジニアリングは、クレイモデル(粘土を用いたデザインモデル)や試作品のデータ化に使用されます。
試作品を基にした3D CADデータは、主に3Dプリンターで出力する際に用いられます。
クレイモデルや試作品を基にして、3Dスキャナーでデータを読み取ると、スピーディーに3D CADデータが得られることが特徴です。
また設計図の図面がなくてもデータ化できるため、3D CADデータを取得するまでの手間や時間を省けます。
製品の解析
リバースエンジニアリングを活用すると、製品の解析が可能になるため、新製品の開発や既製品改良に役立ちます。
製品の曲面や細かい穴形状でも、3Dスキャナーで正確に測定可能です。得られたデータを図面や3D CADデータに照らし合わせることで、製品の改良点を洗い出せます。
さらに、実際に製品を作ることなくデータのみで設計を変えられるため、効率よく製品を開発できます。
美術品のデータ保存
リバースエンジニアリングは、美術品のデータ保存にも使用可能です。実物保存では盗難・劣化などの懸念がある一方で、データ化すると長期間にわたって保存できます。
さらにカラースキャンを併用すると、実物に限りなく近い状態のデータが得られます。
一度3D CADデータを作成した後、材質を変更したレプリカ制作も可能です。
製品や金型の設計
図面を必要としないリバースエンジニアリングは、製品や金型の設計にも役立ちます。例えば金型の設計を変更したい場合、従来は実際に作製する手間がかかります。
しかし、3Dスキャナーでリバースエンジニアリングを活用すると、作製の手間を省いて設計の検討が可能です。
金型の形状を三次元で解析できるため、精度良く設計を変更可能なうえ、様々なパターンを検討できることがメリットです。
SCANTECHでは、ハンディー型3Dスキャナーを用いた「リバースエンジニアリングサービス」を提供しています。
対象物が大きい場合や持ち運びが難しい場合でも、実務経験が豊富なエンジニアが対応します。お客様の現場まで出張できるため、手軽にリバースエンジニアリングを活用したい方は、ぜひご相談ください。
リバースエンジニアリングに利用できる3Dスキャナー
はじめに3Dスキャナーとは、対象物の形状をスキャンしてデータ化する装置のことです。レーザー光やプローブ(探針)により表面の凹凸を読み取ります。
3Dスキャナーは検出方法によって、様々な種類に分かれています。具体的には、下記のとおりです。
- 接触式3Dスキャナー
- 非接触式3Dスキャナー
リバースエンジニアリングに利用できる3Dスキャナーについて、それぞれ紹介します。
接触式3Dスキャナー
接触式3Dスキャナーは、プローブを対象物に接触させて測定する装置です。測定精度は比較的高い特徴があり、精密に測定したい場合に適しています。
しかし、細かい測定箇所や複雑な形状の場合、プローブが入らないことがあります。さらにデータの取得時間が長いため、素早く測定する際は非接触式3Dスキャナーがおすすめです。
非接触式3Dスキャナー
非接触式3Dスキャナーは、主にレーザー光を照射して対象物の形状を測定する装置です。据え置きタイプとハンディータイプに分類されるため、用途によって使い分けると良いでしょう。
例えば、据え置きタイプでは精度よく測定できますが、屋外に持ち運べないことに注意が必要です。さらに測定する対象物のサイズにも、制限がかかってしまいます。
一方でハンディータイプは、持ち運びできるため手軽に測定でき、サイズが大きい対象物でも簡単にスキャンが可能です。
SCANTECHでは、非接触式のハンディー型3Dスキャナーを取り扱っています。リバースエンジニアリングに活用したい方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
リバースエンジニアリングに適した3Dスキャナー
IREAL2Eを用いて東京タワーの模型をスキャンしている様子
リバースエンジニアリングに活用するために、スキャン速度とスキャン精度に優れる3Dスキャナーがおすすめです。
スキャン速度
スキャン速度が速いほど時間をかけずにモデルをデータ化できるため、素早くリバースエンジニアリングを活用できます。
例えば「IREAL 2E」は、毎秒150万ポイントのデータをスキャンできるため、スキャン速度に優れた3Dスキャナーです。
光源に赤外線を用いることで、ハイスピードスキャンを実現しています。
スキャン精度
リバースエンジニアリングに用いる3Dスキャナーは、スキャン精度の高さも重要です。精度が低い3Dスキャナーを使用すると、モデルに近いデータを得られにくくなります。
「IREAL 2E」はカラーモジュールが標準搭載されており、高精度でカラースキャンが可能です。クオリティの高いデータを取得したい方は、IREAL 2Eがおすすめです。
リバースエンジニアリングに関するよくある質問
最後に、リバースエンジニアリングに関するよくある質問に回答します。
Q.3Dスキャナ―を活用したリバースエンジニアリングの一連の流れについて知りたいです。
一連の流れは以下の通りです。
現物を3Dスキャン➡スキャンデータをCADデータに変換➡3Dモデリング(CAD形式に変換又は作りこむ)
3Dスキャナ―を活用したリバースエンジニアリングは手作業による計測よりも大幅に工数を削減することが可能です。
Q.スキャンデータ取得後のモデリング方法について教えてください。
以下の3種類のモデリング方法があります。
- オートサーフェス
- パラメトリックモデリング
- クレイモデリング
SCANTECHでは、オートサーフェス、パラメトリックモデリングを作成しています。スキャンデータに⾯張りを施した、オートサーフェスモデルで、美術品や文化財などの加工用データ、CAD解析などに用いられています。
一方で、パラメトリックモデリングは金型の意匠面やシートパネルに用いられる中⾝が詰まっていない表⾯のみのサーフェスモデリング。そして、材料の定義や後の設計変更や調整が可能な中身の詰まったソリットモデルがあり、当社はお客様の要望に応じて対応しています。
3Dデータを取得後、モデリングを検討されている方はぜひご利用ください。
<<お問い合わせはこちら!
Q.リバースエンジニアリングは何に活用できますか?
リバースエンジニアリングは、主に4つの用途に活用できます。
- クレイモデルや試作品のデータ化
- 製品の解析
- 美術品のデータ保存
- 製品や金型の設計
図面がない試作品をデータ化できるため、3Dプリンターを使った造形や、製品の解析に使用可能です。
まとめ
リバースエンジニアリングは、試作品のデータ化・製品の解析など、様々な用途に使用されます。
クオリティの高いデータを得るためには、高速かつ高精度でスキャンできる3Dスキャナーを選ぶことが重要です。
SCANTECHは、リバースエンジニアリングや三次元測定にお困りの方でも、出張依頼ができる「リバースエンジニアリングサービス」を提供しています。
リバースエンジニアリングの活用を検討している方は、ぜひご相談ください。