3Dスキャンでボブスレー選手にフィットしたヘルメットを製作

そり競技では、わずか100分の1秒の差が勝敗を左右することがよくあります。
そのため、選手の力量はもちろんのこと、使う道具にもタイムに大きく影響を与えています。

中国のボブスレーチームはその道具に目を向け、SCANTECHと協力して、選手の頭の形を3Dスキャンして、選手一人一人にフィットしたヘルメットを製作。そして、北京冬季オリンピックにも挑みました。

この記事では、3Dスキャナーを用いて、どのようにボブスレー選手団のヘルメットを制作したのか、詳しくお伝えします。

ボブスレー競技におけるヘルメットの役割とは?

スケルトン、リュージュ、ボブスレーなどのそり競技において、ヘルメットの役割は大きく分けると2つあります。

一つ目は、「選手の身を守る」ことです。


スケルトンやリュージュは選手の身を守る防具はヘルメットしかないので、安全性の観点から非常に重大です。
一方で、ボブスレーはヘルメットだけでなく、専用のそりも選手を保護してくれます。

ですが、最高時速が140〜150kmに達するため、例えば、コースの曲がり角に衝突してしまうと、選手生命に関わるような大怪我になる可能性があります。なので、ボブスレー競技におけるヘルメットは選手の身を守る大事な道具の一つという意味で、大きな役割を果たしています。


二つ目は、「空気抵抗を減らす」ことです。


ボブスレーは滑走時に、4倍近く重力を受けながら走行するため、タイムを早めるためには、空気抵抗を減らすことが大事になってきます。そのため、空気抵抗を受けにくくするという観点から大きな役割を果たしています。これら2つの役割をヘルメットが担っています。


では、ボブスレー用のヘルメットを制作するにあたって、「なぜ、SCANTECH製の3Dスキャナーを使用する必要があるのか?」をお伝えします。

なぜ、「IREAL 2E」3Dスキャナーを採用したのか?

上記で解説した2つの役割を果たしてくれるヘルメットとはどういった物なのか?


それは、「選手の頭の形にフィットしたヘルメット」です。

頭の形は千差万別なので、その人が被るとフィットしていたとしても、別の人が被るとフィットしないということはよくあります。


したがって、選手一人一人に合ったヘルメットを制作しないといけません。
そういった要求に3Dスキャナーは応えてくれます。


頭全体を3Dスキャンすれば、正確な3Dデータを取得することができ、選手に合ったヘルメットを作ることができます。
しかし、「正確な3Dデータ」を取得するとなると、それを満たしてくれる3Dスキャナーは中々ありません。


そこで、中国ボブスレーチームは様々な3Dスキャナーを用いて3Dスキャンを繰り返した結果、SCANTECH製のハンドヘルド型3Dスキャナー「IREAL 2E」を採用しました。

ボブスレー選手の頭部を3Dスキャンしている様子
ボブスレー選手の頭部を3Dスキャンしている様子

IREAL 2Eには最大0.1mmの高精度スキャン機能が搭載されています。
また、身体の揺れや干渉部分を自動的に取り除くことができるため、より選手の頭にフィットしたヘルメットを制作できます。


そうして、SCANTECHは専門家と中国ボブスレーチームとの共同で、25人の選手のヘルメットを制作するために、3Dスキャンを行いました。

IREAL 2Eで選手の頭部を3Dスキャン後、そのデータをもとに3Dプリント

SCANTECHのヘルメット設計チームは「IREAL 2E」で、選手一人一人の頭部を10分の1mmの解像度で3Dスキャンしました。


赤外線VCSELという安全な赤外線光源を使用しているため、人間の目に害を与えることがありません。さらに、マーカーを使用せずにスキャンできるため、スキャン作業をスムーズに進めることができました。


3Dスキャンで取得した3Dデータ
3Dスキャンで取得した3Dデータ


その後、取得した3Dデータをもとに、3Dプリンターでカスタマイズされたヘルメットを出力しました。※3Dプリンターは高精度かつ高強度な造形物が制作できるSLS方式(粉末焼結積層造形方式)の装置を使用しました。

素材はT800と呼ばれる高性能炭素繊維と軽量性に優れたピュアカーボンを採用したため、従来のヘルメットよりも0.5kg以上、軽量化。

また、ヘルメットのクッション層はハニカム構造(正六角形を並べた構造)で設計されているため、優れた強度と、高い熱循環効率をもたらすことができます。


その結果、空気抵抗を減らして、選手の身をしっかり守ってくれるヘルメットを作ることに成功しました。

3Dスキャン、3Dプリントを活用して作成したヘルメット
3Dスキャン、3Dプリントを活用して作成したヘルメット

最後に

中国ボブスレーチームとSCANTECHが共同で制作したヘルメットは現在、開催中の北京冬季オリンピックにも使われています。

選手のみなさんが安全に競技に打ち込めるようにSCANTECHがヘルメット制作に参加できたこと、心から光栄に思います。選手の健闘を祈りながら、影ながらではありますが応援しています。


SCANTECHでは、お客様の要望をお聞きした上で、その要望に適した3Dスキャナーを提案いたします。

また、「実際に見たり、触ってみないとわからない」という方に向けて、当社の3Dスキャナー専門の技術スタッフによる無料デモを承っています。3Dスキャナー導入を検討されている方は下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。