歯科用3Dスキャナーの基礎知識を解説!特徴と導入事例

3Dスキャナー 歯科

今回は、歯科用3Dスキャナーの基礎知識や、メリット・デメリット、導入事例について解説します。

歯科用3Dスキャナーは、一般的な製造業や品質管理で用いられている3Dスキャナーとは異なり、歯科医療専用で活用されている機械です。

口の中をスピーディーにスキャニングし、長時間患者が口を開けた状態を維持しなくても口腔内のデータ取得が可能。その他にもさまざまなメリットが得られるため、徐々に導入する歯科医院が増えてきています。

歯科用3Dスキャナーとは

歯科用3Dスキャナーとは、口の中を撮影して高解像度の3Dデータを取得できる機械のことです。口の中の3Dデータを得ることから「口腔内スキャナー」とも呼ばれています。

歯科用3Dスキャナーは、動画を撮るかのように歯型をスキャンしてデータを取得します。上下の歯列を取得するのに、わずか数分だけで済ませられるため、従来の手法である、粘度のような印象材を口の中に入れて歯型を取るものに比べて、息苦しさや嘔吐感がありません。

また、取得した3Dデータは、「インビザライン」と呼ばれる歯の矯正治療や、3Dプリンターを用いて被せ物、詰め物などを作製する用途で使われます。

歯科用3Dプリンターの特徴や仕組みなどについて知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

参考記事:歯科用3Dプリンターとは?導入前に見るべきポイントについても解説!

参考記事:医療分野における3Dプリンターの活用例について解説

歯科用3Dスキャナーのメリット

歯科用3Dスキャナー メリット

歯科用3Dスキャナーは、導入することでどれだけのメリットが得られるのでしょうか。ここでは、歯科医療業界で3Dスキャナーを用いるメリットについてご紹介します。

型取り時間の短縮

歯列や歯茎の型を取るには、従来の手法だと粘度のような印象材を口の中に入れ、固まるまで待つ必要がありました。印象材が固まるまでおよそ5分程度かかり、上下の型を取った場合は合計で10分程度かかる計算になります。

しかし、歯科用3Dスキャナーを用いた型取りは、口の中に機械を入れて撮影をするだけなので、印象材を使用するときと比べて時間を大幅に短縮できます。また、マウスピースなどの製作工程において、現物の型ではなく、データ上でのやり取りで製作を始められることから、製品の完成までにかかる期間の短縮に繋がります。

患者の不快感が少ない

印象材を用いた型取りは、口の中に印象材を入れ、固まるまで時間をおく必要があるので、吐き気やえずいてしまう現象の「嘔吐反射」を起こしてしまう場合が多くありました。

歯科用3Dスキャナーを用いた手法では、型取りに要する時間がほとんどなく、長時間口を開けずに済むため、不快感なく精密な歯型を採取できます。また、印象材を誤嚥してしまうリスクも避けられるので、安全性にも優れています。

人的ミスの削減

従来の印象材を用いた手法では、人の手で作業をしなければならないため、人的ミスを起こしてしまう場合もあります。

しかし、歯科用3Dスキャナーの場合は、機械を使って口の中を撮影するだけの作業なので、人的ミスを削減できるほか、術者の技術レベルや印象材のひずみなどによる差異をなくせるのもポイントです。

治療精度の向上

印象材を用いた型取りは、変形や劣化などにより、正確なデータが得られないことがあります。

歯科用3Dスキャナーは、口の中の情報を高解像度でスキャンして、コンピュータ上で立体的に解析できるため、より精度の高い矯正装置や技工物の作製を実現します。

インビザラインによるマウスピースのフィット感の不具合が生じたケースは、2011年に行われた研究によると、シリコン印象に対して口腔内スキャンの光学印象では、7分の1まで減少したとの研究結果も出ているとのことです。

参照元:3Dスキャナー(3Shape)について  インビザライン・マウスピースのフィット感の不具合が1/7に減少

歯型のデータ化による保存性の向上

石膏で作製した歯列模型などは、長期保存が難しく、場所も取ってしまう問題がありました。一方、歯科用3Dスキャナーは歯型の情報を3Dデータとして残せるので、現物の模型を保管するのに比べて保存性に優れています。

仮に患者の被せ物が取れた場合でも、保存していたデータから、新しく被せ物を作製することが可能です。

歯科用3Dスキャナーのデメリット

歯科用3Dスキャナーにはさまざまなメリットがあることをご紹介しました。一方で歯科用3Dスキャナーは高性能な機器であるものの、いくつかのデメリットも存在します。

高額な導入費用

歯科用3Dスキャナーは、本体価格が500万円以上のモデルが多く、低価格のモノでも200万円程度と高額の費用がかかります。3Dスキャナー導入後にどれだけの費用対効果が得られるか、どれだけの期間で投資した分を回収できるかをよく検討する必要があります。

場合によってはスキャンできない

歯科用3Dスキャナーは、歯の少ない方や嚙み合わせが複雑な方に対して、うまく3Dスキャンできない場合があります。また、機械にエラーが出た際、トラブルの対処法が分からずに作業が滞ってしまうケースも考えられます。

歯科用3Dスキャナーを用いた歯型採取の流れ

ここでは、歯科用3Dスキャナーを用いた「インビザライン治療」の流れをご紹介します。インビザラインとは、米国アライン・テクノロジー社が作製するマウスピース型の矯正装置のことです。

1度だけ取得した歯型の3Dデータをもとに治療を行うので、ワイヤー矯正や他のマウスピース矯正に比べて通院回数が少ないメリットがあります。また、最新のデジタル技術の駆使により、手作業よりも優れた正確なマウスピースが製造できるのもポイントです。

1.口腔内のスキャン

はじめに歯科用の3Dスキャナーを用いて上下の歯型を撮影します。口を開けたままの状態で、息苦しさや嘔吐感のある方は、回数を分けての撮影も可能なため、従来の印象材を使う手法よりも快適に歯型の情報を取得できます。

2.モニター画面で取得した3Dデータのチェック

口腔内を3Dスキャンしたあとは、その場でモニターから3Dデータをチェックします。3Dデータに不備があった場合でも、その場ですぐに対応できるため、再度来院する必要がありません。

3.シミュレーション依頼

採取した3Dデータを、アメリカの製造元に送信してシミュレーションを依頼します。従来では、歯型を空輸などで輸送する必要がありましたが、歯科用3Dスキャナーを用いた手法では、3Dデータでのやり取りになるので時間を大幅に短縮できます。

4.マウスピースの作製

シミュレーション結果が送られてきたあとは、得られた結果をもとに患者と相談して治療計画を立てます。治療計画の結果に基づいて、インビザラインの製作工場にマウスピースの製作依頼をすれば、各々の患者専用のマウスピースが完成します。

歯科用3Dスキャナーの導入事例

ここまで歯科用3Dスキャナーの基礎知識などについて解説しました。最後に実際に導入した歯科医院では、どのように3Dスキャナーを活用しているのかを見てみましょう。

ソレイユ矯正歯科での導入事例

引用元:ソレイユ矯正歯科

ソレイユ矯正歯科では、インビザラインのマウスピース型の矯正装置を作製するために必要な歯型を「iTero Element(アイテロ エレメント)」の3Dスキャナーにて採取しています。

iTero Elementは、歯列矯正装置の「インビザライン」を展開しているアライン・テクノロジー社の歯科用3Dスキャナーです。これまで、インビザライン作製用の歯型は「シリコン印象」と呼ばれる精密印象材で、数分間の時間をかけて採得していたものが、歯科用3Dスキャナーの導入により、型取りが上下顎をすべて行っても、約1分で行えるようになりました。型取りが短時間で行えるので、嘔吐反射の強い方でも快適に歯型を取ることができます。

また、シリコン印象は、採取した歯型をアメリカまで空輸する必要があったため、その分マウスピースが出来上がるまでに時間を要していました。しかし3Dスキャナーの導入後は、データをインターネットで送れるので、シリコン印象のときに比べて1〜2週間程度も早く治療を開始できます。

iTero Elementを用いた治療は、最新の精密スキャニング技術により、マウスピースの精度が向上しているのもポイントです。これにより、シリコン印象を利用した治療に比べて、矯正治療の結果がより良いものになります。

参照元:便利な3Dスキャナー「iTero Element(アイテロ エレメント)」を導入

すが歯科・矯正歯科の導入事例

引用元:すが歯科・矯正歯科

すが歯科・矯正歯科では、3Dスキャナーの導入により、矯正相談に訪れたお客様に対して口の中をスキャニングし、データ化した画像を見せながらカウンセリングを行っています。

3Dスキャナーはすぐに精密なシミュレーションを確認できるので、自身の歯並びについて向き合う機会を持てます。来院してすぐに矯正を決めない場合でも、2〜3年後に矯正するきっかけになることも考慮して、口腔内データはお客様へ提供しているとのこと。

また、3Dスキャナーは作業工程のスリム化や不快感の軽減だけでなく、矯正中の歯の動きや結果の予測まで細かく分析でき、従来よりも精度にこだわった歯型が作製できるようになります。

参照元:3Dスキャナーを活用して行う マウスピース型装置を用いた矯正

歯科用3Dスキャナーに関するよくある質問

最後に、歯科用3Dスキャナーに関して、よくお客様から頂くご質問にお答えいたします。

Q.歯は透明かつ反射するかと思うのですが、スキャン可能なのでしょうか?

光源に赤外線(パターン光投影)方式を採用している3Dスキャナーの場合、透明や反射に弱いので、対象に現像スプレーをかける必要があるため、不向きです。一方で、ブルーレーザーを光源としている3Dスキャナーであれば、歯のような透明かつ反射物でも現像スプレーなしでスキャン可能です。

Q.骨のスキャンをされた例はありますでしょうか?

SCANTECHの非接触式3Dスキャナーで骨をスキャンした事例はございます、下記の記事をご参考頂ければと思います。

<<SCANTECHが1億9千万年前の恐竜の化石を3Dスキャン

まとめ

歯科用3Dスキャナーは、患者の口の中を撮影して3Dデータ化できる機械です。

3Dスキャナーは印象採得時の患者の不快感が少なく、短時間で作業を済ませられるなどのメリットがあります。取得した3Dデータは、歯の矯正治療であるインビザラインや、被せ物、詰め物などを作製するのに活用されています。

高性能な機械である分、価格も高額になるのが注意点ですが、今後の技術の発展により、導入が進むことが予想されています。

SCANTECHでは、非接触式ハンディータイプの3Dスキャナーをラインナップしています。3Dスキャナーの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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