【技術解説】レーザー方式 vs 構造光方式 3Dスキャナーの徹底比較
~高精度測定に最適なスキャン方式とは?~
3Dスキャナーの導入において最も重要な判断基準の一つが「スキャン方式の選定」です。特に、現在主流となっているレーザー方式(Laser-based)と構造光方式(Structured-light-based)には、それぞれ異なる物理的特性と応用分野があります。
本記事では、両方式の原理、特長、適用範囲、導入コストを専門的な観点から解説し、用途別に最適な選択肢をご提案します。
1. 基本原理の違い
■ レーザー方式(Laser Triangulation)
レーザー光を対象物に照射し、反射された光の位置から三角測量により3Dデータを取得。スポットやライン状のレーザーが使われ、点ごとの測定精度が極めて高い。
- 特徴:高精度・高安定性
- 応答性:リアルタイムで精密なデータ取得が可能
- 使用環境:周囲光の影響を受けにくく、工場などの現場環境に強い
■ 構造光方式(Structured Light Projection)
プロジェクターが格子状やドット状のパターンを投影し、複数カメラで変形を解析。広範囲の形状を高速で取得でき、カラー情報の同時取得も可能。
- 特徴:高速・多点同時計測
- 応答性:一度の撮影で大面積の情報取得
- 使用環境:屋内の安定した照明環境が理想
2. 特長比較(技術性能・作業効率・素材対応)
比較項目 | レーザー方式 | 構造光方式 |
---|---|---|
測定精度 | 最高レベル(最大±0.02mm以下) | 中〜高精度(±0.05~0.1mm) |
対象物対応力 | 黒色・光沢面でもスプレー不要 | 暗色・反射面には事前処理が必要 |
環境光耐性 | 高い(屋外でも使用可能) | 低い(強い外光下では精度低下) |
スキャンスピード | 高速(ただし点単位) | 極めて高速(エリア単位) |
カラーデータ取得 | オプションで対応可能 | 標準でカラー対応可(テクスチャ再現) |
携帯性/重量 | 小型軽量機種あり | 機種によってはやや大型 |
導入コスト | 中~高価格帯 | 低~中価格帯 |
3. 適用シーンの違い(業界別・ニーズ別)
用途/業界 | 最適方式 | 理由 |
---|---|---|
品質検査/寸法測定 | レーザー方式 | 精度要求が厳しい産業用途に最適 |
リバースエンジニアリング | レーザー方式 | 複雑形状・精密再構築が可能 |
医療/人体スキャン | 構造光方式 | 非接触・安全性・カラー取得 |
文化財/アーカイブ | 構造光方式 | 色彩・表面質感の忠実な再現 |
デザイン/CG制作 | 構造光方式 | テクスチャ付き3Dデータが必要 |
大型設備/現場スキャン | レーザー方式 | 外乱光に強く、屋外対応も可能 |
4. SCANTECH製品による具体例
◆ レーザー方式の代表機種
NIMBLETRACK

完全ワイヤレスの3Dスキャニングシステムで、コンパクトなデザインながら高い機動性を備えています。
中小規模の部品を精密かつダイナミックに計測可能です。
KSCAN-X

最先端のワイヤレス技術と自動補正フォトグラメトリを搭載し、広範囲の3D測定に新たな基準をもたらす高性能ワイヤレス3Dスキャナーです。
SIMSCAN-E

手のひらサイズのコンパクトなワイヤレス3Dスキャナーで、狭い空間や複雑な構造物の測定に最適です。
◆ 構造光方式の代表機種
3DeVOK MT

カラー再現性・人体対応・マルチモード搭載の万能型で、産業用グレードの性能と多用途性を兼ね備えたプロフェッショナル向けモデルです。
5. まとめ:導入判断のポイント
3Dスキャナーの導入は、単なる機器選定ではなく、測定要件・運用フロー・将来の拡張性を見据えた包括的な技術判断が求められます。以下の観点から、導入時に慎重な検討が必要です。
① 測定精度および再現性の要件
- 寸法公差・形状精度に対する社内/顧客仕様との整合性
- ISO 17025やVDI/VDE規格との適合性の確認
- 再測定時のデータ再現性(繰返し精度)の検証
② 被測定物の材質・表面状態
- 光沢、黒色、半透明、ファイバー材などへの対応性
- スプレー不要の可否と作業工数への影響
- 小型/大型、複雑形状/曲面などへの対応限界
③ 使用環境とスキャンシーン
- 工場現場(温度変化・振動・照明)での安定運用
- 屋外対応可否(IP等級、環境光耐性)
- ワイヤレス使用の必要性(可搬性、可動性)
④ データ出力形式と後処理の整合性
- STL、OBJ、PLY、STEPなど出力形式の柔軟性
- 既存CAD/検査ソフトウェアとの互換性
- カラーテクスチャの必要有無(特に医療・教育分野)
⑤ ワークフローと自動化対応
- 手動操作か、自動化(ロボット、ターンテーブル)との統合性
- トレーサビリティ確保のための校正・キャリブレーション管理体制
- 社内運用プロセスへの組み込みやすさ(トレーニング、手順設計)
⑥ コストとROI(費用対効果)
- 初期導入コストと保守費用(校正費、ライセンスなど)
- 現場での測定時間短縮、再作業削減による効率化効果
- 社内検査標準との整合による外注費用削減
SCANTECHは、レーザー方式と構造光方式の両方において世界トップクラスの技術を提供しており、日本国内でも多数の導入実績を誇ります。製品デモや比較検証のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。