ハンディー3Dスキャナーを用いた造船業界の新製品開発事例のご紹介

3Dスキャナー 造船業界

造船業界は、デジタル化や自動化に向けて移行していますが、高度な造船技術とデジタル技術のサポートにより急速に発展しています。

デジタル化の代表的な技術として、3Dスキャンがあります。3Dスキャンは、船舶の製品開発やリバースエンジニアリング、製造、メンテナンス、オーバーホールなどの用途で重要な役割を果たしており、造船業界のさらなる発展をもたらす可能性を秘めています。

この記事では、SCANTECHのハンディー3Dスキャナーを用いた、造船業界の新製品開発事例をご紹介します。紹介する内容は、以下の2種類です。

  • 製品のアップデートのために2隻のボートを測定したRodosto Marin社の事例
  • ボートのリバースエンジニアリングを目的としたHealthport社の事例

これらの事例は、ボートをハンディー3Dスキャナーで測定し、取得した3Dデータから製品の構造を最適化したり、新製品の開発に役立てるのを目的としています。

製品のアップデートのために2隻のボートを測定したRodosto Marin社の事例

始めにご紹介するのは、電動および非電動の船舶やヨット、手漕ぎボート、その他の船舶および付属品を販売するトルコの企業「Rodosto Marin社」の事例です。

Rodosto Marin社では、製品構造の最適化および新製品の開発に役立てるよう、既存の2隻のボートの実物大を、SCANTECHのハンディー3Dスキャナーを用いて測定を行いました。

Rodosto Marin社は、2隻のボートのCADデータから、シャーシの構造と機能をよりよく改善し、改めて構造設計を行う必要がありました。しかし、急ぎで新製品の開発を行う必要があり、製品開発の効率を向上させるためにハンディー3Dスキャナーを活用しています。

ボートの寸法は、1隻目が長さ4600×幅2100mm、2隻目が長さ5200×幅1900mmです。ボートは大型サイズかつ、構造が複雑なため、一般的なハンディー3Dスキャナーを用いて測定するのは困難です。

そこで今回の事例では、マーカーレスであらゆる形状をスキャンできる「TRACKSCAN-P」と、コンパクトで狭いスペースの測定に対応できる「SIMSCAN」のハンディー3Dスキャナーを使用しています。

TRACKSCAN-Pは、船体の多くの箇所のSTLデータをスムーズに取得できます。SIMSCANは、船体内の狭い箇所の3Dデータを取得するのに使用します。孔や溝などの測定が困難な場所には、ポータブルCMM測定装置「T-Probe」を用いています。

これらの機器により、2隻のボートの3Dモデルの取得は、わずか1.5時間で完了しており、人件費と時間の大幅な削減を実現しています。

今回の事例と同じく、TRACKSCAN-PとSIMSCANを用いてベンツGクラスの車を測定した例もあります。自動車の測定の様子に興味のある方は、ぜひ以下の記事をチェックしてみてください。

<<自動車産業における3Dスキャナーの活用

TRACKSCAN-PとSIMSCANを用いるメリット

ここでは、SCANTECHのハンディー3DスキャナーのTRACKSCAN-PSIMSCANを用いるメリットについて解説します。主なメリットは以下の4点です。

  1. マーカーレスによる効率的な測定
  2. 幅広い箇所に対応した高精度な測定
  3. 狭いスペースでの測定に便利
  4. 専用ソフトウェアによるサポート

1.マーカーレスによる効率的な測定

TRACKSCAN-Pは、光学式トラッキング測定技術を搭載しており、マーカーを貼り付けることなく測定が可能。最大スキャン速度は1秒あたり260万点の測定と速いほか、マーカーの貼り付けや取り外しがないため、大幅に時間を短縮し、作業効率の向上に寄与します。

2.幅広い箇所に対応した高精度な測定

ポータブルCMM測定装置「T-Probe」の活用により、プローブ精度(T-Probe プローブ使用時)0.030mmを実現します。今回の事例では、キャビンの底部と端を接触測定しています。

3.狭いスペースでの測定に便利

SIMSCANは、一般的なハンディー3Dスキャナーに比べて、本体に搭載された2台のカメラ間の距離が狭い分、測定箇所の干渉領域が小さく、視野角が妨げられにくい設計です。これにより、キャビンの隙間や端などの狭いスペースを、正確にスキャンできます。

4.専用ソフトウェアによるサポート

取得した3Dデータは、専用ソフトウェアのサポートにより、高精度のCADデータに変換できます。船体の複雑な表面形状や、詳細な部分を正確に復元できるため、目的の3Dモデルを取得するのに便利です。

また、専用ソフトの直感的な操作により、新製品開発の効率を大幅に向上させられます。

これらのメリットから、SCANTECHのハンディー3Dスキャナーは、元の船舶の3Dモデルを効率的に取得するのに適しています。新製品の構造をより最適化できるようにサポートしてくれるため、最終製品の品質や、作業効率の大幅な向上が期待できます。

ボートのリバースエンジニアリングを目的としたHealthport社の事例

続いては、ビジネスで直面する問題に対して戦略やアイデアを提供する、アメリカ合衆国の企業「Healthport社」の事例です。

今回の事例では、お客様からCADデータを用いてボートのリバースエンジニアリングを行いたいとの要望があり、ハンディー3Dスキャナー「KSCAN-MAGIC」を用いて、船体を測定しています。

プロジェクトの課題

今回の事例では、以下の課題をクリアする必要がありました。

  1. ボートのサイズは、長さ12×幅5×高さ2mほどと大きい分、スキャンの誤差が大きくなってしまう。
  2. ボートの形状は複雑で曲面が多いほか、手の届きにくい箇所が多くある。
  3. ボートの外側には、ラッカー塗装や反射面があるので、一般的なハンディー3Dスキャナーでは測定が難しい。

これらの課題をクリアするために、SCANTECHのハンディー3Dスキャナー「KSCAN-MAGIC」を用いて3Dデータを取得しました。

KSCAN-MAGICは、写真測量システムの搭載により、全体的な空間位置を取得し、高速でディテールの細かい箇所や深穴の測定が可能です。

3Dデータは、赤外線レーザーによる「大幅スキャンモード」を利用して、スムーズに取得しています。また、単一ブルーレーザーによる「ディープホールスキャンモード」は、死角やアクセスしにくい箇所をスキャンするのに便利。船体の反射する箇所は、クロスブルーレーザーにより、専用の粉末スプレーを使用せずともスキャンが可能です。

KSCAN-MAGICを用いるメリット

KSCAN-MAGICを用いるメリットは以下の通りです。

  1. 写真測量システムの搭載
  2. 広範囲スキャンによる測定効率の向上
  3. コンパクトな形状で柔軟な測定に対応
  4. 計5つのスキャンモードを搭載

1.写真測量システムの搭載

大型の物体をスキャンする場合、測定誤差が徐々に蓄積されていくものです。しかしKSCAN-MAGICは、写真測量システムにより、最初に位置決めのマーカーの座標を取得できる設計で、大型の物体の測定による誤差を排除し、0.020mmレベルのスキャン精度を実現します。

2.広範囲スキャンによる測定効率の向上

一般的なハンディー3Dスキャナーに比べて、KSCAN-MAGICはスキャン範囲が広く設計されています。11本平行赤外線レーザーにより、最大スキャン幅は1440×860mmを実現し、少数のマーカーを貼り付けるだけで、正確に大型の物体をスキャンできます。

また、大容量の寸法データを取得できるので、測定効率の向上が期待できます。

3.コンパクトな形状で柔軟な測定に対応

ボートは大型のため、簡単に移動できません。しかしKSCAN-MAGICは、軽量性と柔軟性があるため、使える環境が限定されにくく、さまざまな測定場所に持ち運ぶことができます。船体のアクセスがしにくい狭い箇所でも、簡単にスキャンが可能です。

4.計5つのスキャンモードを搭載

KSCAN-MAGICは5つのスキャンモードを標準装備しており、さまざまな部位のスキャンに対応できます。

高速スキャンモードの場合は、最大スキャン速度が1,350,000 点/秒に達します。死角や手の届きにくい箇所を測定する場合は、単一ブルーレーザーのディープホールスキャンを用いることで、細部までの測定が可能です。

また、光沢のある物や黒い物の測定には、特化したスキャンモードを搭載。船体の反射する金属部分などを測定する際は、専用の粉末スプレーを吹きつけずに高精度で3Dモデルを取得できます。

今回の事例では、KSCAN-MAGICの性能により、大型ボートの複雑な形状や、曲面の3Dデータを取得でき、高精度なCADモデルを得ることに成功しました。これにより、船体の形状が改善されたほか、人件費と時間を大幅にカットしています。

まとめ

3Dスキャン技術は、高精度な3次元データを取得する方法として、造船業界のデジタル化に大きく貢献しています。SCANTECHの3Dデジタル技術は、船舶の製造・建造・部位検査・運航・保守など、さまざまな現場で活用されています。

SCANTECHでは、3Dスキャン技術と製品の継続的な革新により、造船業界の技術の限界を超え、よりよいデジタル化の未来に向けて発展できるようサポートしていきたいと考えています。