文化財のデジタルアーカイブとは?活用事例もご紹介!
デジタルアーカイブとは、デジタル技術を用いて文化財をデータ化し、保存することを指しており、さまざまな博物館や自治体などで活用されている技術です。デジタルアーカイブを活用することで、保存した文化財の情報を気軽に検索・参照したり、文化財の保全などにも役立ちます。
今回は、デジタルアーカイブに関する基礎知識・活用事例や、デジタルアーカイブ化に便利なSCANTECHの三次元測定サービスなどについて解説します。
デジタルアーカイブとは
デジタルアーカイブとは、「デジタル」と「アーカイブ」を組み合わせてできた造語で、建築物や美術品などの文化財をデータ化して保存することを指します。
「デジタル」はデジタル技術を用いて現物をデータ化するという意図から、「アーカイブ」は記録文書や公文書館などの意味を持つ単語であることから、双方を組み合わせて「デジタルアーカイブ」という言葉が生まれました。
デジタルアーカイブは、主に博物館・図書館・公文書館・自治体・企業で採用されている技術です。デジタルアーカイブ化した文化財は、データベースに保存し、インターネットによる検索や参照が可能になります。
デジタルアーカイブの対象は、博物館や自治体などが有する資料や資源、有形無形の文化など、多岐に渡ります。
デジタルアーカイブの目的
文化財をデジタルアーカイブ化する目的は、以下の通りです。
文化財の保全と記録
デジタルアーカイブは、貴重な文化財をデータ化することで、現物が損傷や劣化などにより消滅してしまうのを防止します。劣化や損傷が進んでいる文化財に対して、デジタルアーカイブ化できていれば、たとえ現物がなくなったとしても、後世に文化財の情報を継承できるようになります。
インターネットでの検索や参照
デジタルアーカイブは、インターネットから場所や時間を問わず、文化財の検索や参照ができるようになります。また、取得した文化財のデータは、研究・学習支援・防災・地域振興などの幅広い用途で活用できます。
デジタルアーカイブのメリット
文化財をデジタルアーカイブ化すると、以下のメリットが期待できます。
文化財の破損や劣化の防止
デジタルアーカイブ化をすれば、文化財に触れずとも資料を確認できるようになるため、現物の破損や劣化の進行を防止できます。保存した文化財のデータは、複製などをしても劣化せず、さまざまな用途に活用できるのもポイントです。
文化財の情報を簡単に公開・閲覧できる
文化財のデジタルアーカイブ化により、地理的に文化財を観に行くのが難しい方でも、インターネット上から資料を閲覧できるようになります。
また、文化財の情報を、いつでもどこでも確認できるようになるため、美術館・博物館・自治体などの広報として機能し、集客効果が期待できます。
デジタルアーカイブは、複数人に対して同時に資料を提供できるので、学業などの教材としての活用も可能です。
データを利用した研究や幅広い表現の実現化
デジタルアーカイブ化した文化財は、資料のデータを切り出したり編集したりできるため、現物では難しかった研究や考察が行えるようになります。また、デジタルアーカイブ化した文化財に、解説や音声などの資料を加えることで、より詳細な表現や情報提供が可能になります。
3Dスキャナーを用いたデジタルアーカイブ化の活用事例
ここでは、SCANTECHで行った、3Dスキャナーを用いた恐竜の化石のデジタルアーカイブ化についてご紹介します。
対象物である恐竜の化石の骨格は全長8mで、3DスキャナーはSCANTECHの非接触式ポータブル型の「TRACKSCAN」を用いてデジタルアーカイブ化しています。
恐竜の化石は非常に古い資料のため、風化の影響で損傷しており、化石に触れずに3Dスキャンを行う必要があります。TRACKSCANは、3Dスキャンで使われることの多いマーカーを使う必要がないので、化石に触れることなく3Dスキャンを行えます。
3Dスキャンしたデータは、上図のように3Dモデルに変換し、恐竜本来の姿を評価しました。
また、上図のように、3Dスキャナーと3Dプリンターと組み合わせて、恐竜の骨格モデルの造形も行っています。精密な恐竜モデルの3Dデータを得ることで、考古学者がより解像度の高い恐竜の骨格を観察できるようになります。
恐竜の骨格モデルを3Dスキャンした様子は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
<<SCANTECHが1億9千万年前の恐竜の化石を3Dスキャン
文化財のデジタルアーカイブ化には三次元測定サービスが便利
文化財をデジタルアーカイブ化するひとつの方法として、三次元測定サービスを利用することが挙げられます。
3Dスキャナーなどの三次元測定機を導入するのは、大きくコストや手間がかかるものです。しかし、三次元測定サービスを使えば、専用の機械の導入や使用方法を学ばずとも、三次元測定の専門家が文化財をデジタルアーカイブ化してくれます。
三次元測定機には、大きく分けて「接触式」と「非接触式」のタイプがあり、どちらのタイプを用いるかで、特徴が異なります。
接触式は、対象物にセンサーやプローブ(深針)を接触させて測定を行うタイプです。測定の精度が高い一方で、プローブが入らない形状だと、測定が困難です。また、大きな対象物も測定ができません。
非接触式は、対象物に接触することなく測定できるタイプです。この特徴から、キズを付けたくない文化財に対しても、安全にデジタルアーカイブ化できます。また、接触式に比べて、測定スピードが速いこともメリットです。現在は3Dスキャンの技術が進歩しているため、非接触式のモデルが多く普及しています。
SCANTECHでは、非接触式の三次元測定サービスを提供しています。使用する3Dスキャナーは「SIMSCAN」「KSCAN-MAGIC」「TRACKSCAN」の3機種で、いずれも非接触式のため、文化財に触れずに高精度で測定できます。
また、共通の仕様として、上記の3機種はブルーレーザーを光源としているため、光沢物や黒い対象物への粉末スプレーの塗布が不要で、幅広いサイズに対してのスキャンが可能です。いずれの機種も測定精度0.1mm未満のため、解像度の高い3Dデータを取得することができます。
その他の各機種の特徴については以下の通りです。
SIMSCANは、軽量かつ小型のハイエンドハンディ3Dスキャナー。わずか570gの本体重量かつ、500mlペットボトル程度のサイズで取り回し性の高いモデルです。測定が難しい狭いエリアや、構造物の裏側などの測定がしやすく、主に4mまでの小型~中型程度の対象物で使用します。
KSCAN-MAGICは、赤外線レーザーとブルーレーザーのハイブリッドスキャン技術などにより、高速スキャンを実現したモデル。SIMSCANの基本性能に加えて、写真測量機能と赤外線測定(広範囲スキャン)が可能です。そのため、小型~大型(4m以上のモノや10mクラスのモノ)の高精度な計測をする場合に適しています。
TRACKSCANは、ハイエンドモデルのハンディ3Dスキャナーです。マーカーを必要としないため、文化財にマーカーシールを貼ることなく、そのままの状態でスキャンできます。対象物のサイズは、中型〜大型(4m以上のモノや10mクラスのモノ)まで対応し、高精度な測定が可能です。
これらの3機種を用いることで、幅広い用途に対応できます。文化財をデジタルアーカイブ化したい方は、ぜひ弊社の三次元測定サービスをご検討ください。
3Dスキャナーを用いたデジタルアーカイブ化に関するよくある質問
最後に、お客様からよくいただく、3Dスキャナーとデジタルアーカイブ化に関連するご質問について回答いたします。
非接触式3Dスキャナーではどういった文化財をデジタルアーカイブ化できますか?
非接触式3Dスキャナーは、主に美術品や文化遺産などをデジタルアーカイブ化するのに適しています。
非接触式3Dスキャナーを用いたデジタルアーカイブ化は、始めに本体とPCを接続、およびキャリブレーション(校正)をした後、対象物をスキャンして3Dデータを取得します。
取得した3Dデータは、PCから専用のソフトウェアにて補正を行い、ポリゴンデータに変換することで、対象物をデジタルアーカイブ化できます。
注意点として、一般的な3Dスキャナーの場合、光沢物や黒いモノのスキャンは難しい傾向にあり、専用の粉末スプレーを塗布しなければスキャンできないケースがあります。
しかし、SCANTECHの三次元測定サービスで用いる「SIMSCAN」「KSCAN-MAGIC」「TRACKSCAN」の3機種では、粉末スプレーなしでもスキャンが可能です。また、フィギュアのような小さいサイズから、車のような大きいサイズまで、幅広く対応します。
使用する3Dスキャナーや対象物の条件などにより、デジタルアーカイブ化できるモノとできないモノがあるので、詳細について知りたい方は弊社までお問い合わせください。
取得した3Dデータはどのような用途に使えますか?
デジタルアーカイブで取得した文化財の3Dデータは、PCなどのさまざまなデバイスから、データの検索や参照が可能になります。保存したデータは劣化しないため、後世に文化財を継承するのにも便利です。
また、デジタルアーカイブと3Dプリンターを活用すれば、文化財のミニチュアモデルを作ることも可能です。高精度な3Dプリンターだと、文化財を精密かつコンパクトな形で表現できるほか、手作業では作りにくい形状や細かな箇所でも造形が可能です。
その他にも、スキャンした文化財の3Dデータから鋳型を作成し、銀細工を作るなどの製品展開も期待できます。
まとめ
デジタルアーカイブは、博物館や自治体などが有する文化財を、デジタルデータとして保存することを指します。
保存されたデータは、インターネットを利用することで、いつでもどこでも検索や参照できるようになるため、現物のある場所に行かずとも情報を確認できます。
また、文化財が損傷や劣化してしまった場合でも、あらかじめデジタルアーカイブ化されていれば、後世に情報を継承できるのもポイントです。
手元にある文化財をデジタルアーカイブ化したい方は、ぜひSCANTECHの三次元測定サービスをご検討ください。SCANTECHでは、豊富な実務経験を積んだエンジニアが、全国どこにでも出張いたします。