3Dスキャナーの精度はどれくらい?メリット・デメリットを合わせた解説

3Dスキャナー 精度

 

3Dスキャナーにおける精度と解像度は、スキャンデータの質を決める上で重要な要素です。

もし、取得したスキャンデータの質が低い場合、現物と異なる形状やサイズが生成されます。さらに、3Dスキャナーには様々な種類があり、それぞれの機種にメリット・デメリットがあります。もし、用途に適さない3Dスキャナーを使用すると、正確なスキャンデータを取得できません。

そのため、この記事では3Dスキャナーにおける精度と解像度、ハンディー3Dスキャナーのメリット・デメリットについて解説。そして、各々の条件に適した3Dスキャナーをご紹介いたします。

3Dスキャナーとは?

3Dスキャナーにおける精度と解像度について解説する前に、「そもそも3Dスキャナーとはどういった装置で、どんな特性を持っているのか?」解説します。

3Dスキャナーとは、モノや空間情報からデータへの変換装置で、モノや空間の三次元情報を取得するために用いる装置です。一言でいうと、インプット装置です。赤外線やレーザーなどの光を用いて、物体の表面をスキャンし、その取得したデータをもとに部品や製品を作成することができます。

インプットの質がアウトプットの質に比例する。

これはモノづくり分野においても同じで、インプットの質は製品の完成度(アウトプットの質)に繋がるため、製造業を中心として様々な業界で3Dスキャナーを導入する企業が増えています。3Dスキャナーについての詳しい解説は、『3Dスキャナーとは?原理や仕組み、活用事例をわかりやすく解説』でも行っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

3Dスキャナーの精度と解像度について

3Dスキャナーの製品ページやカタログには、「精度」と「解像度」という項目があります。ここでは、下記の「3Dスキャナーにおける精度と解像度の関係性」を表した画像をもとに、精度と解像度について解説します。

3Dスキャナーにおける精度

3Dスキャナーにおける精度と解像度の関係
3Dスキャナーにおける精度と解像度の関係性

 

3Dスキャナーの精度は、スキャン結果が現物とどの程度一致しているのかを表したものです。例えば、3Dスキャナーの精度が0.1mmだとします。その場合、スキャン結果は現物と0.1mm以内の誤差があるということになります。そのため、高精度な3Dスキャナーを用いて、対象物をスキャンすることで、細部や形状を正確に取得することができます。

3Dスキャナーの精度はドイツ技術者協会の規格である「VDI/VDE 2634」の規定により、ミリメートル単位で表すのが一般的です。ちなみに、SCANTECH製3Dスキャナーは繰り返し測定した結果の平均誤差を「精度」としています。

3Dスキャナーにおける解像度

解像度は、どの程度の点間隔でスキャンしているのかを表したものです。例えば、3Dスキャナーの最高解像度が0.1mmの場合、一番短い点間距離が0.1mmであるということになります。そのため、高解像度な3Dスキャナーを用いて、対象物をスキャンすることで、細部や形状を捉えることができます。

スキャンデータの質=精度×解像度×ノイズ

3Dスキャナーにおける精度と解像度は以下の通りです。

  • 精度:スキャン結果が現物とどの程度一致しているのかを表したもの
  • 解像度:スキャン結果がどの程度形状を捉えているのかを表したもの

では、スキャンデータの質は何で決まるのかというと、精度と解像度とノイズによって決まります。ここで、3Dスキャナーにおけるノイズとは何かというと、一言で言うと、スキャンデータに含まれる誤差や不要なデータのことを指します。これは、スキャンする環境や対象物、3Dスキャナーの性能によって発生します。

例えば、表面が鏡面加工された反射率の高いモノをスキャンする際、ノイズが発生することがありますが、スキャン後、ソフトウェアでメッシュ処理を施すことでノイズは取り除くことが可能です。

以上より、スキャンデータの質を高めるためには、高精度・高解像度・低ノイズが求められます。しかし、3Dスキャナーには様々な種類があり、使用する用途に合った機材を使用しないといけません。次は3Dスキャナーの種類について紹介したうえで、ハンディ3Dスキャナーのメリット・デメリットについて解説します。

ハンディ3Dスキャナーのメリット・デメリット

3Dスキャナーは様々な方式がありますが、大きく分けて「接触式」「非接触式」「X線CTスキャナー」、この3種類に分類できます。

  • 接触式3Dスキャナー:スキャンする対象物にプローブを直接当てて、物体の形状を測定する方式
  • 非接触式(ハンディ)3Dスキャナー:3Dスキャナーから発せられる光を対象物に当てて、直接触れずに形状を測定する方式
  • X線CTスキャナー:医療や研究に利用されている装置。上記の2つの方式は表面の形状しか取得できない一方で、物体の内部形状まで取得可能。

今回は、モノづくり分野においてよく使用されている非接触式(ハンディ)3Dスキャナーのメリット・デメリットについて紹介します。

ハンディ3Dスキャナーのメリット

対象物と離れた位置から測定できる

イスを3Dスキャンしている様子

非接触式3Dスキャナーは現物に接触せずに現物から離れた位置から測定することができます。それゆえ、手作業だと測定が難しい湾曲した形状やエンジンルームなど人が立ち入ることが難しい場所での測定でも、非接触式3Dスキャナーであれば測定することができます。

また、直接接触することが難しい美術品や文化財の測定も非接触式であれば、直接触れることなくスキャン可能です。それゆえに、現在、地方自治体を中心に非接触式3Dスキャナーを用いて文化財をデジタル化して保存(デジタルアーカイブ)する取り組みが進んでいます。

<<【参考記事】文化財のデジタルアーカイブとは?活用事例もご紹介!

 

様々な用途に活用ができる

3Dスキャナーによって取得したスキャンデータは、専用のソフトウェアで後処理を行うことで、様々な用途に活用ができます。活用例は下記の通りです。

  • 検査(CAT)
  • リバースエンジニアリング(RE)
  • シミュレーション(CAE)
  • 切削加工(CAM)
  • 設計(3D CAD)
  • デジタルアーカイブ
  • CGモデリング

ノギスや直尺を使用して、手作業で計測する場合、測り間違いがあると、再度、計測する必要がありますが、現物の形状を取得しておけば、コンピューター上で寸法測定や形状測定が可能です。また、現物はあるが、3D CADデータがない場合に対しても、3Dスキャンを行う。そうすることで、3Dデータを保存でき、今後、上記で挙げたような活用ができます。

 

失われつつある技術を継承することができる

金属部品をスキャンしている様子
金属部品をスキャンしている様子

現在、製造業を中心として様々な業界で、職人さんの技術を継承する人が少なくなっています。継承者がいないとどうなるのか?これまで脈々と受け継がれてきた技術はそこで途絶えてしまいます。これは日本のモノづくりにおいてもマイナスです。

そこで、3Dスキャナーの出番です。

3Dスキャナーはモノからデータへの変換装置としての役割だけでなく、作り手の想いや技術を次の世代に継承する役割も兼ね備えています。職人さんの技術をデータとして残し、次の世代に繋げるために、3Dスキャナーは今後活用されていくことが期待されています。

SCANTECHでは、職人さんがこれまで受け継いできた技術が途絶えないように、職人さんが作られた創作物をデータとして残す三次元測定サービスを提供しています。現物のスキャンだけでなく、データの後処理も行っていますので、職人さんの技術を3Dスキャナーを使って、データとして残したい方は是非ご利用ください。

三次元測定サービスの詳細はこちら

ハンディ3Dスキャナーのデメリット

高精細なスキャンができない

ハンディ3Dスキャナーは接触式の三次元測定機と比較すると解像度が劣ります。そのため、接触式の三次元測定機の方が高精細なスキャンが可能で、解像度の観点から考えるとメリットです。しかし、一方で解像度を高めることでデメリットも生じます。

例えば、解像度を極限まで高めると、スキャンスピードは遅くなります。また、取得したデータ量が大きくなり、ソフトウェアでの後処理に長い時間を要したり、PCのスペックによっては後処理ができないこともあります。なので、実際の現場では最大限まで解像度を上げずに、現物をスキャンすることが多いです。

 

測定できない対象物がある

鏡面仕上げのミラーにAESUBスプレーを吹き付けている様子
鏡面仕上げのミラーにAESUBスプレーを吹き付けている様子

対象物の表面が次のような素材である場合、測定できない場合があります。

  • 黒いもの
  • 透明のもの
  • 光沢があるもの
  • 鏡面的なもの

例えば、黒いものをスキャンする場合、光源を吸収してしまうため、ノイズが多く含まれたり、面が粗くなり、正確なデータを取得することができません。(光沢物や鏡面加工のモノ、透明なモノも同様です)

aesubスプレーを振ると、反射が出やすくなり、形状取得しやすくなります
AESUBスプレーを振ると、反射が出やすくなり、形状取得しやすくなります

その場合にはAESUBスプレーを使用して下さい。この現像スプレーを吹きかけると、測定しにくい現物でも正確なデータを取得することが可能です。また、こちらのスプレーは時間が経つと自然に消えて、現物の拭き取りや洗浄の必要がないため、効率よく作業が勧められます。

<<【参考記事】3Dスキャナー専用スプレーの選び方!メリット・デメリットまで解説!

 

スキャンデータの加工には、専門的な技術や知識が必要

3Dスキャナーを用いて取得したスキャンデータはCADデータではありません。また、そのままのスキャンデータを検査やリバースエンジニアリングなどの用途に活用できません。スキャンデータは必ず後処理作業を行う必要があります。専用のソフトウェアを使って、ノイズ処理、スキャンできなかった部分の穴埋め、用途に合った形式への変換作業などを行わなければなりません。したがって、3Dスキャナーとソフトウェアが使えるエンジニアが不可欠で、これらを扱える人材がいないと、3Dスキャナーを運用することが難しいというのが最大のデメリットです。

SCANTECHではこの課題を解決するために、当社の3Dスキャナーを購入されたお客様に3Dスキャナーやソフトウェアの使い方を解説します。

さらに、3Dスキャナーを使用してみて、不明点があればその都度ご質問に対応いたします。また、導入を検討されているお客様には、ショールーム見学を実施しています。

東京ショールームの様子

実際にハンディ3Dスキャナーを触って、現物をスキャンしたり、お客様の使用用途にSCANTECH製品が適しているのかなどのご質問に技術スタッフが回答します。大阪・東京の2拠点で実施していますので、導入を検討されているお客様は是非お越しください。

ショールーム見学の詳細はこちら

ハンディ3Dスキャナーおすすめ4選

ここでは、SCANTECHが取り扱っている以下のハンディ3Dスキャナー4製品をご紹介いたします。

1-3は光源にブルーレーザーを採用しており、いずれの製品もVDI/VDE 2634 パート3規格に準拠しています。一方で、4は光源に赤外線を採用しています。各々の製品の特徴の詳細についてご紹介いたします。

1.TRACKSCAN


本製品はマーカーレスでの測定が可能なため、マーカーの貼り付けの必要がありません。また、付属されている光学式トラッカーを設置することで、測定範囲を拡張することができるため、大型製品の外装部分をスキャンするのに適した製品です。

 


 

上記に掲載しているYouTubeはTRACKSCANを用いて、ベンツGクラスの外装部分をスキャンしている様子です。

こちらは車にマーカーシールを貼らずに測定しています。光沢物や透明な部分に対してもAESUBスプレーを使って、スキャンデータを取得しています。外装部分の3Dデータを取得するまでの流れやスキャン方法については下記の記事でも紹介していますので、是非ご覧ください。

<<【参考記事】ハンディ型3Dスキャナー「TRACKSCAN-P42」で自動車の3Dデータを取得する方法

<基本スペック>

項目 詳細
レーザー本数合計 42本
精度 0.025mm
最大スキャン速度 1,900,000点/秒
最大スキャン幅(ワンフレーム) 500 mm × 600 mm
レーザーの種類 Class II
最大解像度 0.020 mm
出力形式 pj3, asc, igs, txt, mk2, umk, stl, ply, obj
PCスペック CPU:i7-8750H以上、RAM:32GB以上(64GB推奨)GPU:NVIDIA GTX1050Ti(4GB)以上 (AMD社GPUは対応しておりません)

TRACKSCANの詳細はこちら!

2.SIMSCAN



SIMSCANは重量は570gで、画像の通り非常にコンパクトな製品です。

取り回し性が高く、エンジンルームのような狭いエリアに対してもスムーズに測定が可能です。ちなみに、上記でも紹介した動画では、内装部分の細かいパーツのスキャンを、取り回しが効くSIMSCANで行っています。

三次元測定
内装部分をSIMSCANでスキャンしている様子

 

高速スキャン、高解像度スキャン、ディープホールスキャン、この3種類のスキャニングが可能です。また、最大0.020mmの精度、最大0.025mmの解像度と、ハイエンドクラスの性能を有するため、検査やリバースエンジニアリングなどあらゆるニーズに対応可能です。

<基本スペック>

項目 詳細
レーザー本数合計 30本
精度 0.020 mm
最大スキャン速度 2,020,000 点 / 秒
最大スキャン幅 410 mm x 400 mm
レーザーの種類 Class II
最大解像度 0.025 mm
出力形式 pj3, asc, igs, txt, mk2, umk, stl, ply, obj
PCスペック CPU:i7-8750H以上、RAM:32GB以上(64GB推奨)
GPU:NVIDIA GTX1050Ti(4GB)以上 (AMD社GPUは対応しておりません)
本体サイズ 203 mm x 80 mm x 44 mm
本体重量 570 g

SIMSCANの詳細はこちら!

3.KSCAN-MAGIC



本製品はSIMSCANの3種類(高速スキャン、高解像度スキャン、ディープホールスキャン)のスキャニング方法に加えて、大幅スキャンとフォトグラメトリシステムを搭載。多様なスキャンニーズに対応いたします。さらに、フォトグラメトリ機能により、コーデットマーカー(基準点を設置するために用いられるマーカーのこと)をポイントとして認識できます。


それにより、定点変化を基準とした、精度の高い測定が可能で、測定時間の短縮も期待できます。主に、小型〜大型製品のスキャンに適したハンディ3Dスキャナーです。

<基本スペック>

項目 詳細
レーザー本数合計 41本
精度 0.020 mm
最大スキャン速度 1,350,000 点/秒
最大スキャン幅 1440 mm × 860 mm
レーザーの種類 Class II
最大解像度 0.010 mm
出力形式 pj3, asc, igs, txt, mk2, umk, stl, ply, obj
PCスペック CPU:i7-8750H以上、RAM:32GB以上(64GB推奨)GPU:NVIDIA GTX1050Ti(4GB)以上 (AMD社GPUは対応しておりません)

KSCAN-MAGICの詳細はこちら!

IREAL 2E


光源に赤外線を採用したハンディ3Dスキャナーです。対象物の凹凸を捉えることで、0.3mmピッチでカラー点群やポリゴンデータの取得ができます。それにより、人物のスキャン、ゲーム、CGモデリング、文化財のデジタルアーカイブなどカラーデータを使用したい方に適しています。


人物をスキャンしている様子

本体価格は547,800円(税込)で、100万円以上する3Dスキャナーとも同等の性能及び精度を発揮するため、コストパフォーマンスが非常に高いです。

<基本スペック>

項目 詳細
光源 赤外線VCSEL
屋外使用 可能(なるべく自然光を避けてください。)
カラーモジュール 24 ビット(標準搭載)
最大スキャン速度 1,500,000 点/ 秒
スキャン精度(ワンフレーム) 最高 0.10mm
スキャン解像度(点間隔) 0.2 ~ 3mm
出力形式 OBJ, STL, PLY, ASC, SK
本体重量 850g
PCスペック CPU:i7-8750H以上、RAM:32GB以上(64GB推奨)、
GPU:NVIDIA GTX1050Ti(4GB)以上 (AMD社GPUは対応しておりません)

IREAL2Eの詳細はこちら

3Dスキャナーの精度に関するQ&A

ここでは、3Dスキャナーの精度に関してお客様からよく頂くご質問にお答えいたします。

Q.各メーカーによって、精度の基準は異なるのでしょうか?

異なります。SCANTECHでは繰り返し測定した結果の平均誤差を精度としていますが、メーカーによっては点群のばらつき精度を精度と表記しており、基準が異なります。なので、高精度な測定をされたい場合はメーカーに問い合わせてみたり、展示会やショールーム見学で実際に現物をスキャンすることをオススメいたします。

Q.3Dスキャンは安全に行えますか?

SCANTECHのハンディ3Dスキャナーは、レーザー製品の安全基準における「CLASS Ⅱ」に準拠したブルーレーザーを採用し、安全なレーザーを使っています。そのため、特に防護対策をする必要はありません。ただ、レーザーが出ている時に直視すると、目を傷める場合があるので、直視だけはしないようにしましょう。

まとめ

3Dスキャナーの精度の基本について解説し、ハンディ3Dスキャナーのメリット・デメリットについて、そして、SCANTECH製品をご紹介いたしました。3Dスキャナーにおける精度について、少しでも理解が深まれれば幸いです。

当社はハンディ3Dスキャナーの販売だけでなく、スキャニングのサポートや三次元測定サービスを提供しています。また、今回紹介した「TRACKSCAN」「SIMSCAN」「KSCAN-MAGIC」の3機種購入を検討されている方を対象に、無料デモサービスも行っています。こちらのサービスでは、当社の技術スタッフがお客様の現場まで出張し、デモを実施いたします。実際にハンディ3Dスキャナーに触れて、現物をスキャンすることも出来ますので、購入を検討されているお客様は是非ご利用ください。

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